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鍼灸のキーワード

鍼灸院秀鳳は、どのようにからだを診て、治療を行っているのでしょうか?
専門的になりますが、診療についての理解が深まるかと存じます。

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  • 本治法は、からだ全体の調整を目的とする治療法です。古典医学書に基づくシンプルな治療法で、最小限のツボを活用しながら、身体に余計な負担をかけることなく最大の治療効果を発揮します。本治法により、生命力が強化され、病を治す力(自然治癒力)が回復し、根本から治癒してゆきます。標治法とは、症状の現れている局所に対して直接施術を施す治療法です。患者さんの訴える苦痛が強く、本治法のみでは直接効果があげにくい、または、治癒に時間を要する症状には、標治法を加える必要があるのです。急性症などの場合にしばしば即効性が現れます。
    このような特徴を持つ本治法と標治法の相乗効果によって、より治療効果が高まるのです。

  • 東洋医学でも西洋医学でも、最初に診察から始めます。東洋医学の四診法(望診・聞診・問診・切診)と西洋医学の四診(視診・聴診・問診・触診)は、
    望診が視診、聞診が聴診という具合に、それぞれが対応しているようです。
    ・望診(ぼうしん) 病状を視覚的に判断します。(例 姿勢や顔色、表情など)
    ・聞診(ぶんしん) 耳や鼻で病状を判断します。(例 声や臭いなど ※病気によって特殊な臭いを発する場合があります)
    ・問診(もんしん)  病状や病歴について質問してゆきます。病状を時系列に整理し、外的要因との因果関係を把握するために重要です。
    ・切診(せっしん) ⇒3.切診の項目で詳しく説明しています。

  • 切診は、手で身体を触れることによって病状を把握する診察法で、東洋医学では特に重視されています。西洋医学の触診は切診に対応しているようにみえますが、厳密には切診の一部であるといえるでしょう。切診による診察は、質感や温度、硬さなど、手掌で察知される身体の微細な情報から健康状態や不調の原因などを把握してゆきます。基本となるのは、腹部の状態をみる腹診と両手首の脈を診る脉診(みゃくしん)で、治療方針を決める重要な手がかりとなります。四診法に腹診と脉診を加えて六診法とする学説もあります。

  • 秀鳳は、脉診を診療の要としています。脉診では、両手首の3点、計6個所の脉が発する多種多様な信号をとらえ、症状の所在や程度を把握します。
    秀鳳で用いているのは、主に脉状診比較脉診です。脉状診では、脉の速さ:遅数(ちさく)、深さ:浮沈(ふちん)強さ:虚実(きょじつ)などの脈の状態を、 比較脉診では、五臓六腑の状態を診てゆきます。西洋医学でも手首の脈によって循環器系の状態を診ていますが、 これは東洋医学の脉診から一部を導入したものといわれています。

  • 東洋医学、ことに鍼灸では経穴(けいけつ)と、それを結ぶ経絡(けいらく)は、診療のキーポイントとされています。というのは、経穴は、身体表面上の特別な場所で、診察ポイントであり、治療ポイントでもあるからです。ですから、優秀な鍼灸師とは、経絡と経穴の達人ともいえます。

鍼灸MINI知識

鍼灸治療のベースとなっている東洋医学や治療で使われる鍼(はり)やお灸、ツボなどについて、歴史的な視点と視野を広げてお話しさせていただきます。

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  • 【鍼灸の古典】
    『黄帝内経(こうていだいけい)』は、中国最古の体系的な医学書であり、東洋の伝統医学の原典ともいわれています。『黄帝内経素問』と『黄帝内経霊枢』という二つの部分からなり、それぞれ81篇の論文から成り立っています。『素問』が人間の生理や衛生を主題とする医学原理の領域を扱っているのに対して、『霊枢』は、鍼灸の実践や応用を主題とする臨床医学の領域となっています。それぞれの構成は、黄帝とその側近である岐伯・伯高・雷公・少兪・少師らとの問答形式で進められています。
    【アジアの伝統医学】
    アジアの伝統医学には、ユナニ医学、アーユル・ヴェーダ医学、そして、中国医学といった3つの流れがあります。中国医学は、鍼灸、湯液(漢方薬)、養生といった3つの医療分野を生み出し発展させてきました。鍼灸についていえば、鍼の最古の資料は、甲骨文字に見ることができます。灸は『荘子』に初めて登場します。灸に使う艾(もぐさ)については『孟子』に記されていますから、灸療法の起源は古代中国の戦国時代(2500年前)にまでさかのぼることができます。
    【鍼灸の日本伝来】
    鍼灸の日本伝来は、飛鳥時代の仏教公伝の頃です。その後、遣隋使などによって多くの医学書が輸入され、奈良時代には、鍼博士の職制が定められました。この頃から日本において、鍼灸と湯液(漢方薬)は独自の発展をしながら、1000年にわたる伝統医学として、日本の医療の主流となっていきます。

  • 「病気を診る」西洋医学に対して、東洋医学は「ひとを診る」医学といわれています。東洋医学の根本には、人間は自然の一部であるという考え方があります。そのため、からだが自然法則から外れたときには不調となって現れますが、一方では自らを治す力、自然治癒力を持ち合わせていると考えられてきました。東洋医学は、人間がこの自然治癒力を最大限に発揮するのを手助けすることに主眼を置いています。からだのどこかに不調があれば、そこに自然に手がいき、撫でたりさすったりすることで症状を和らげようとします。つまり、治療の原点はこの「手当て」にあるのです。こうした「手当て」を繰り返していくうちに、効果的な「手当て」の箇所が「ツボ」として体系化され、鍼灸療法が確立したと思われます。まさに、ひとを診ることで発展してきた医学といえるでしょう。

  • 「なんとなくからだの調子が悪い」、「検査しても異常が見当たらない」、「長い間、原因不明の不調から解放されないで苦しんでいる」など、よく耳にする話ですが、このように病名が特定されにくい症状は一般に不定愁訴と呼ばれています。西洋医学的な治療法が定まりにくい不定愁訴に対しては、からだ全体のバランスを調整する鍼灸治療が適しています。定期的な治療を継続することで体質改善を図ることが効果的といえるでしょう。

  • 鍼灸療法の根本は、ひとが自然治癒力を発揮するのを手助けする治療です。肩が痛いからといって肩だけに鍼をするという治療ではありません。確かに肩に鍼をすれば楽にはなりますが、それは一時的な鎮痛効果に過ぎず、根本的な治療とはいえません。患部を含めたからだ全体のアンバランスを整えていくことで痛みの原因を根本から治していきます。西洋医学の「病気を診る」に対して、東洋は「ひとを診る」医学だといわれるのはこのためでしょう。

  • (1)九鍼(きゅうしん)
    鍼の使用は石器時代の中国に始まります。最初は石器で、その後、骨針、竹針(箴)、陶針へと変遷し、金属針(鍼)の使用は戦国時代からです。金属針(鍼)の登場によって、経絡の概念や臓腑学、陰陽論などが結びついて鍼治療が確立しました。『黄帝内経』には「古代九鍼」が紹介されています。九鍼は古代中国で用いられていた九種類の鍼で、『黄帝内経霊枢(九鍼十二原篇・九鍼論)』には、その形状や用法が詳細に記録されています。
    ※用法による分類
    ・切開する鍼:鑱鍼(ざんしん)、鋒鍼(ほうしん)、鈹鍼(ひしん)
    ・刺入する鍼:毫鍼(ごうしん)、員利鍼(えんりしん)、長鍼(ちょうしん)、大鍼(たいしん)
    ・接触する鍼:員鍼(えんしん)、鍉鍼(ていしん)
    (2) 毫鍼(ごうしん)
    九鍼のなかでも、日本で最もよく用いられているのが毫鍼です。毫鍼とは、髪の毛ほどの細さの鍼のことです。毫鍼が使用されている理由として、通常の刺入はもちろん、皮膚を接触・摩擦する員鍼の代わりになり、太さ・長さを変えることで長鍼や大鍼の代用ともなるなど、応用範囲が広いことがあげられます。毫鍼は日本で改良され、現在のような毛髪と同じくらいの細さ(0.12mm~0.22mm、注射針の5~10分の1)になりました。ところが、細くしなやかなために、熟練した技術がないと、肌に刺入しようとしても、しなってしまいます。刺鍼技術を磨く訓練として、桐板に毫鍼を刺し通す練習法があります。これは毫鍼を刺しいれる技を磨く訓練で、鍼灸学生が苦労する実技です。なかなかむずかしいんですよ。
    (3)刺さない鍼(接触鍼)
    接触鍼といいます。子供に使う小児鍼が代表的です。押したり、転がしたり、かるく叩いたりします。員鍼(えんしん)・鍉鍼(ていしん)などがあります。

  • 【鍼職人の伝統の技】
    「蚊に刺されても痛くないのは、なぜだろう?」。日本の鍼製造の技術は、このような素朴な疑問から始まったといわれています。鍼職人は蚊の針先に注目して、鍼の先を滑らかな穂先型に加工しました。ていねいに研磨され、鋭敏に仕上げられた穂先型の鍼先によって、注射針のように皮膚を斬り裂かずに痛みなく刺入ができるようになったのです。まさに、日本の鍼職人の伝統の技によって生み出された工夫といえるでしょう。

  • 【痛くない刺し方の発明】
    鍼の技法を「刺鍼(ししん)法」といいます。日本においては、中世までは、中国伝来の撚鍼(ねんしん)法(皮膚により入れる方法)が主流でしたが、江戸時代の杉山和一は、鍼管に通した鍼の柄を叩いて皮膚に刺し入れる「管鍼(かんしん)法」を開発しました。管の与える圧によって刺入痛を軽減する管鍼法は、無痛刺鍼ともいわれ、日本医療史の画期をなしたといえます。現在の日本においても管鍼法が刺鍼法の主流となっています。

  • 「灸は身を焼くものにあらず。心にあかりをともすものなり」 。空海(弘法大師)の言葉だと言われていますが、たしかに、「点す(ともす)」と書くように、小さな艾の点を体の表面にポンと据えるのです。灸は体を温めるのにとても効果的です。米粒の半分以下の大きさの艾がからだ全体を温めるのは、ツボに対して働きかけているからなのです。

  • 蓬はタンポポと同じ、キク科の多年草です。学名は Artemisia princeps といいます。Artemisia(アルテミシア)は、ギリシャ神話の女神アルテミス(ラテン語名ディアナ、英語名ダイアナ)に由来します。Princeps(プリンケプス)は「最高」という意味ですから、学名を翻訳すると、「超すてきなアルテミス」となるのでしょうか。漢方では、乾燥させた蓬を艾葉(がいよう)といい、古くから毒気や邪気を払う力があるとされてきました。精油・ミネラル・ビタミンを豊富に含んでいることで、ほとんどの病気に利用されるほど薬効の多い薬草です。
     ・整腸作用による便秘解消
     ・老廃物の排出作用による血液浄化
     ・ホルモンバランスの調節、子宮機能の活性
    上記の症状に優れた効能があるといわれていますから、学名に女神の名がつけられている事情も理解できます。女性の若さと美しさをたもつ薬草ともいえるのですね。

  • 経絡との関係によって、ツボは正穴、奇穴、阿是穴(あぜけつ)という3種類に分類されています。正穴は経絡上にあって位置や名前が決まっているツボ、奇穴は経絡に属してはいないけれど位置や名前が決まっているツボ、阿是穴は反応はあるけれど位置や名前が決まっていないツボです。経穴の数は非常に多く、治療に使われている経穴は1000ケ所以上にものぼります。経絡と経穴は、鍼灸治療にとってキーポイントともいえます。鍼灸治療とは、経穴を用いて、生命エネルギーの流れをスムーズにする療法なのです。

  • ツボ(経穴 けいけつ)は、診察と診療という両方の側面をあわせもつ重要なものですから、東洋医学は、その探求に数千年の歴史をかけてきました。その結果、国や各流派によって独自の理論が生まれたのです。鍼灸が世界に広まるにつれて、各国の鍼灸界の交流が深まり、統一基準をつくろうという機運が高まってきました。他方で、ツボの位置が共通していても、どのツボを治療に使うか、また同じツボであっても人により治療法が異なる場合もあります。経験豊富な鍼灸師がマニュアル通りのツボを選ばず、個々の反応が現れる部位をツボとして使う場面はよくあることです。
    「ひとそれぞれの体質や症状を診て施術する」、これこそが鍼灸治療の真骨頂ともいえるのです。

  • ツボは、Pain Pointといいます。阿是穴(あぜけつ)の英語訳だと思います。阿是穴とは「あ!そこ!そこのツボ!」という意味で、圧痛点ともいい、原始的なトリガーポイントかとも考えられています。もともと、ツボはみな阿是穴だったはずです。一般にツボを意味する経穴は、漢代の陰陽五行説による経絡体系のなかで秩序化された万人共通のツボといえます。「頭痛がひどくてコメカミを押えていた」という体験をお持ちの方も多いでしょう。少陽胆経の頷厭(ガンエン)というツボを指圧しているのです。これも阿是穴だったはずですが、万人共通のツボとして「少陽胆経の頷厭」という名前がつけられました。
    他方で、そのひと特有のツボもたしかにあります。阿是穴は、そのひと特有のツボとか経絡体系から外れた「その他扱い」のツボの総称ともいえるでしょう。そして、この阿是穴こそが、「ひとを診る」という医療姿勢を支えてきたのです。
    ※トリガーポイントTrigger Point 引金点とも言われる圧痛点の一種です。そこが引き金となって、他の部位に痛みをもたらす点をいいます。たとえば、頭痛の原因が肩の凝りだった場合などです。

  • (1) 経絡って?
    鍼灸では経絡を利用して治療を行います。経絡とは、正確には、縦に走る経脈(正経12本と奇経8本)と横に走る絡脈をあわせたものを指しますが、からだ中を縦横に走る生命活動の統御システムであるといえるでしょう。この経路を流れるのは“気と血”という生命エネルギー体で、全身の栄養や新陳代謝、免疫系や自律神経系などを司っています。この気血の流れが部分的に滞ったり過不足が生じると病態となって現れるのです。鍼灸治療は、このアンバランスを取り除き、流れをスムースにさせるよう調整を行っていきます。また、この経絡システムは身体器官だけではなく、精神活動をも司っています。中国最古の医学書『黄帝内経霊枢』によると、人体を統制する5つの代表臓器(「肝」、「心」、「脾」、「肺」、「腎」)は、それぞれ「魂」、「神」、「意・智」、「魄」、「精・志」という5つのこころを宿しているとしています。経絡はこれらを結びつけるネットワークシステムでもあるのです。つまり、経絡を介したからだの調整をおこなっていくことで、こころの状態をも整い、心身ともにバランスのとれた健康な状態を取り戻すことができるといえるでしょう。

    (2)神経って?
    「神経」という用語は、江戸時代の杉田玄白(1733~1817)が『解体新書』で使用した造語です。オランダ語の「zenuw」からの訳語ですが、当時の日本の医学には該当する概念がなく、東洋医学の「神気」と「経脈」を合成して創りだしたといわれています。「世奴(zenuw)、此に神経と翻す。其色白くして強く、其原脳と脊とより出づ。蓋し視聴言動を主り、且つ痛痒寒熱を知る」と、神経の形状や機能などについて、『解体新書』は、克明に記しています。

    (3)神経の発見
    神経が医学史に登場するのは、2500年ほど前のことです。アレクサンドリアで活躍したヘロフィルス(BC355~BC280)は「解剖学の祖」と呼ばれていますが、神経系を検討するなかで、知覚神経と運動神経を区別したことによって「神経の発見者」といわれています。また、神経系と血管の分離によって、動脈と静脈の最初の発見者となったともいわれています。

  • 西洋医学では、“気”は「精気(プネウマ)」といわれていました。精気の経路について研究をした最初の医学者は、ヘロフィロス(神経の発見者)と同じ時代に活躍したエラシストラトス(BC304-BC250)です。彼によれば、精気には栄養供給と神経支配をしている2種類があって、それが全身を循環することで人間は生き、活動しているというのです。精気は横隔膜の運動(呼吸)によって肺に吸い込まれ、肺静脈から左心室へと送られて「生命精気」となります。心臓は精気が循環する始まりです。心臓の鼓動と弁膜によって一方向に流れる血流がつくられ、精気はそれとともに動脈を通って脳に運ばれ「動物精気」に変わります。こうして、精気は末梢神経を通じて手足の筋肉を動かすというのです。このように、呼吸器系、循環系、神経系を体系的にとらえた精気の循環論は、その後の人体生理学の基礎になります。それで、エラシストラトスは「生理学の祖」といわれています。

  • 人体は「3つの気」からなりたっていると考えられています。
    ①先天の気 父母から受けた生命エネルギー
    ②後天の気 水穀(飲食物)を飲食して得られる栄養素
    ③天陽の気 自然界の空気
    先天の気、後天の気、天陽の気の3つの集合体を「元気(原気)」といいます。つまり、元気がいいとは、3つの気が充実していることをいうのです。

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